青色申告をすると特別控除が受けられるという話をしましたが、実は同じ特別控除でも条件によって、10万円、55万円、65万円、と控除額に差が生じてきます。
どのような条件でこれらの差が生じるのかを説明していきましょう。
まず青色申告をして、かつ以下の4つの要件をすべて満たしている場合は「55万円 or 65万円控除」となり、満たしていない場合は「10万円控除」となります。
- 不動産所得、もしくは事業所得を生む事業を営んでいること
- 複式簿記で記帳していること
- 現金主義ではないこと
- 記帳に基づいて作成した損益計算書と貸借対照表を添付して法定申告期限内に提出すること
これらの要件に加え、さらに以下の条件を満たしていれば「65万円」の特別控除、満たしていなければ「55万円」の特別控除が受けられるようになります。
・e-Tax による申告(電子申告)もしくは電子帳簿保存を行うこと
(参考:国税庁_青色申告特別控除)
それではそれぞれの条件について、わかりやすく解説していきましょう。
複式簿記で記帳していること
55万円以上の特別控除を受ける場合、帳簿を単式簿記ではなく複式簿記で記帳を行わなければなりません。
山林所得の場合は10万円の特別控除しかうけられないということですね。
ちなみに単式簿記と複式簿記の違いは以下のとおりです。
単式簿記
単式簿記とは、1つの項目に対して1つの勘定科目で記載する方法です。
たとえば「2月13日に仕入れで10,000円の現金を使った」という場合には、以下のよう記載します。
このように、単純に仕入れに10,000円使ったという書き方をするわけですね。
複式簿記
一方複式簿記の場合、1つの項目に対して2つの勘定科目で記載をします。
単式簿記と同じ例を複式簿記で書くと以下のとおりです。
このように、「10,000円分の仕入れを行った」ということと「10,000円の現金を使った」ということを分けて書きます
ちなみに複式簿記で記帳をする場合、左側に「借方(かりかた)」、右側に「貸方(かしかた)」を書いてください。
・借方 → お金の使い道
・貸方 →支払のために調達したお金
例で説明すると、「10,000円分の仕入れを行った」が「借方」で、「10,000円の現金を使った」が「貸方」ということですね。
さらに複式簿記の例を挙げてみましょう。
このような形ですね。
ちなみに複式簿記で帳簿をする場合、この借方と貸方の合計は必ず一致することになります。
複式簿記については言葉で説明すると難しく感じるかもしれませんが、最近は確定申告用のソフトが充実しており、ややこしいところは自動で入力されるため、実際にやってみると意外と簡単ですよ。
現金主義ではないこと
会計処理の方法には「現金主義」と「発生主義」の2種類があり、55万円以上の特別控除を受けるためには「発生主義」を採用する必要があります。
この2つの違いは以下のとおりです。
現金主義 |
現金が実際に動いた時点のみ記帳をする |
発生主義 |
支出・収入の発生が確定した時点でも記帳をする(売掛金、買掛金など) |
簡単に言うと、「帳簿に現金の動きだけでなく、支出・収入の発生まで記帳するのが発生主義である」ということですね。
青色申告で55万円以上の特別控除を受けたい場合は、この「発生主義」で記帳を行わなければいけません。
記帳に基づいて作成した損益計算書と貸借対照表を添付して法定申告期限内に提出すること
55万円以上の特別控除を受けるためには、以下の2つの書類を法定申告期限内に提出しなければいけません。
1.損益計算書(P/L) |
会社の収益と費用の損益計算をまとめた財務諸表 |
2.貸借対照表(B/S) |
決算日における資産、負債の内容が記載されている財務諸表 |
正直この説明を見ても、それぞれどんな書類なのかイメージが湧きにくいかと思います。
ただ、これらの書類についても確定申告用のソフトを使えば自動で作成されるはずなので、とりあえず「2つの書類を用意して期限内に提出する」ということだけ意識しておけば問題はないでしょう。
e-Tax による申告(電子申告)もしくは電子帳簿保存を行うこと
2020年度より、55万円控除から65万円控除にするためには「電子申告」もしくは「電子帳簿保存」が必要となりました。
まず確定申告の電子申告は、以下の「e-Tax」から行うことができます。
》e-Tax
e-Taxで申告を行うためには「電子証明書」の取得や「開始届出書」の提出といった事前準備が必要となるので注意して下さい。
一方「電子帳簿保存」とはその名のとおり、一定の要件のもとで帳簿を電子データのまま保存することです。
帳簿を電子データで保存すれば、保管や確認の手間が省けますね。
ただしこの電子帳簿保存については、実施する3ヵ月前に届出を出しておく必要があります。
詳しい説明は国税庁のHPに記載されているので、そちらをご確認ください。
》国税庁_[手続名]国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請
このどちらかをすれば青色申告の特別控除がさらに10万円上乗せされる(55万円 → 65万円)ことになるので、ぜひ実施するようにしましょう。